「シャドウ、シャドウってば!起きなさいよ!」

今日はシャドウとシルバーの結婚記念日。でも、日ごろのシリアスな顔とは裏腹にものすごくお寝坊なシャドウは起きないのである。

「む・・・。なんだ、シルバー?」

「なんだ、じゃないわよ。もう・・・。」

これが気の強いやつならば一発殴るとこだろう。しかし、シルバーはそうではない。あきれて朝食を作りにいった。

「何かあったか・・・。ん?・・・わ、悪かった、シルバー!待ってくれ!」

布団を跳ね除け、塵が舞う中シャドウはシルバーの後を追った。



朝食が終わった後、シャドウはシルバーに謝り、訊ねた。

「今日はどうするつもりなんだ?」

「どうしよう?久しぶりに、何も考えずに歩くっていうのはどう?」

「・・・・それでいい。」

支度が出来ると、二人はどこへ行くとも無く歩き出した。

「本当に久しぶりね、こんな風に歩くのは・・・。」

「ああ。」

シャドウは、政府のエージェントとして働いている。普段は家にいないことも多い。

「ちょっと腰おろしましょうか。」

シルバーが誘い、ベンチに腰掛ける。毎回毎回こんな調子だ。でも、二人ともこれでいいのである。

「静かだな・・・。こんなときが、いつまでも続けばいい・・・。」

叶わぬ願いである。しかしシャドウは、心底シルバーを大事にしていた。そしてシルバーも、また・・・。

「今日のこと忘れてたのに?」

「・・・!!」

図星である。後ろからの影にはちゃんと気づいてはいたが。

「ひゅ~ひゅ~。あついねぇ、おふたりさぁん?」

「・・・だれだ?」

「いやぁ、通りすがりのもんでして~。こっちのきれいな姉ちゃん、ちょっと貸してもらってい~い?」

気がつくと回りは数人の若者に囲まれている。大方、行き場が無くて暇をもてあましている連中だろう、とシャドウは見当をつけた。

「なぁ、いいじゃぁん。」

「シャド・・・。」

シルバーが言い終わるより早く、シャドウは連中を吹き飛ばしていた。カオスブラストの応用技である。

「ぐげぇ。」

あっという間に気絶した集団を尻目に、シルバーとシャドウはその場を立ち去っていった。